辛丑(かのとうし)─ 終わりと始まり ─

在宅介護終わりました。私の場合は『こんなでした』をご参考までに。

自宅で亡くなる (3)ドライアイスは高いか安いか

斎場に向かうまで、母は自宅にいることになる。
棺にドライアイスを詰めてはいるものの痛んでこないかが心配になる。
「明日また交換にきますから」と言ってくれたが、大丈夫なのか?
冷房を効かす時期でもないが、部屋の温度を下げておくため、冷房をガンガンかける。
寒い。

真夏だったら大変だと思う。
痛んでくるだろうし、においもしてくるだろう。
斎場にすぐに運べなくても葬儀社側でご遺体を安置しておいてくれるサービスもある。
場所の問題があって安置が難しい場合や気候なども考慮し、お願いするのもいいだろう。

母が自宅にいる間に従妹が来てくれた。
コロナ禍もあって葬儀が終わってから知らせるつもりであったが…。
遠いところを飛んできてくれた従妹の弔問は嬉しかった。

斎場に向かうまでドライアイスと冷房で凌ぐ。
葬儀の日、母の顔が少し仏に近づいていたように感じた。
自宅に2日、荼毘にふすまで4日かかった。

最近DIY葬という言葉があるようだが、実際は家族だけで出来るものではないと思う。
親族の死に直面して、落ち込む中葬儀の手配なんて無理だ。

以前は家族も多く、近所に親族も住んでいたりして『人手』があった。
物知りの長老が仕切って葬儀のほとんどは身内や近所の者で行った。
通夜も葬式も自宅で執り行われたし、火葬場までも自分たちで運んだ。
日頃から付き合いのある僧侶がかけつけてくれた。

家族単位が小さくなった今ではプロの葬儀社の手を借りないと執り行えなくなった。
ご遺体を冷やすドライアイス?どこに売ってるか知っていますか?

そういうものを全てやってくれるのが葬儀社。
ドライアイス代金は高かったけれども、そこにはタイミングよく交換しれくれるマンパワー代金も含まれている。

ドライアイス代金+マンパワー+α

ドライアイス代金=1回5,500円は高いか安いか?

適正料金がよくわからない。

自宅で亡くなる(2)警察署から自宅へ、そして湯灌の儀

警察から自宅までは◆◆葬儀社の車(寝台車)で。
マンションなので事前に寝台がエレベーターに入るよう管理人さんにお願いしておいた。

◆◆葬儀社の担当者はNさん。
早速葬儀の段取り。
日程の関係で翌々日に通夜、その次の日に葬儀となる。
それまで母は自宅の仏間に安置しておくこととなった。

「葬儀は家族だけでいい」と日頃から言っていた母の言葉もあり、市営の斎場の一番小さい部屋をお願いした。数日後の葬儀なので小さいところが空いていた。
市営斎場にはいくつか部屋があるが、最近は小さなところから埋まっていくそうだ。
コロナ禍でもあり、家族葬で送られるところが多い。昔のように100名単位で弔問客がというのはまずない。それなのに市営斎場は現実的でないと言うか、大きな部屋ばかりで…。
Nさんは「葬儀は予約しておくということが出来ません。小さいところが取れずに一番大きいお部屋でご家族数名だけで送られる場合もあります」とのこと。
うーん、家族葬はこれからも増えていくだろうから、市の方も現状に即した部屋割りに変更すべきだと思う。

亡くなった数時間後には葬儀のスケジュールを決めないといけない。 
気が動転しているし、わからないことだらけで半ば“葬儀社のいいなり”になりがち。
安いのか、高いのか、判断がつかない。
「ちょっとお待ちください、調べてみます」なんていう時間も気力もないので、提示されたものに「はい、それでお願いします」というしかない。

自分の意思で選んだのは遺影写真の額の色くらいかもしれない。
あ、それと供花。
でもそれも選択肢は少なくて、選んだうちに入らないか。
後から考えて、
『これは要らなかった』
『これは高い』
と思うものもある。

でもとにかく葬儀の日程は迫っているので決めないといけない。
父の葬儀もやっているので二度目の経験だけれども、何回やっても慣れないだろう。
昔は大家族だったし、近所付き合いも多かったから、いろんなことをよく知っている人が必ず一人はいてその人に聞けば『何でもわかる』って感じだったが、今は聞く人も無しってとこか。

◆◆葬儀社のNさんとの打ち合わせが終わった頃、湯灌の儀を行うスタッフさんが到着した。
ベッドほどの大きさの簡易プールのようなものを持って来られた。
ちょっと驚いたが、スタッフの方は「大丈夫です。お母様の横にもう一枚お布団を敷くスペースがあれば十分です」
そういえば警察署で湯灌の手配をお願いした時にスペースのことを尋ねられたっけ。

父の時は病院で亡くなったので、病院で執り行ってそれから自宅にという段取りだったので自宅での湯灌の儀は初めてだった。
いや、感心するほど手際がよかった。

末期の水で口を湿らせ、家族で顔を拭いてから後は湯灌師の女性2名にお任せした。
装束は母のお気に入りの薄ピンクのブラウスにしてもらった。
1時間後、お化粧もして綺麗になった母と対面した。

【明細】
■ 寝台料金(I警察署から自宅まで)19,800円
■ 湯灌の儀 71,500円
ドライアイス5,500円×3=16,500円
■ 綿花(ドライ処置時1回分)2,750円×3=8,250円
■ 浄香セット3,300円×2=6,600円

寝台料金はこんなものなのか…。すごく高いと思った。
湯灌の儀もとても高いが、人数、道具を考えると致し方なし。出来栄えに家族も納得したので。
ドライアイス、綿花、浄香セットは高い!ご家庭によっては浄香セットをお願いしなくてもいいかもしれない。例えば前に使ったのがある、とか。
葬儀社で買う線香とかは高いです。特に渦巻線香とか。ただ近所で気軽に買えるものではないので。
渦巻線香は葬儀後四十九日まで使うものです。うちは葬儀社に頼まずネットで追加注文。

葬儀社を通すとなんでも高いですが、『サービス料込み』ですから。
それで納得できる値段なら適正価格かと思います。

自宅で亡くなる (1)

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死体検案書
<在宅介護、終わりました。

5月〇日 午前7時過ぎ。
なかなか起きてこない母を見に行くと様子がおかしい。
声をかけても返事がないし、眠っているにしては…。
慌てて妹を呼ぶ。
昨夜からたまたま来ていて今日はここから出勤の予定だった。

妹に119番通報を頼み、私は訪問看護ステーションに連絡をした。
妹:「すぐ来てくれるから、人工呼吸して!ベッドの上より硬い床の方がいいって」
二人で母を畳の上に下ろし、交代で人工呼吸を試みた。
私:「保険証とお薬手帳!私が(救急車)に乗っていくから」
ここ数年、何度も救急車のお世話になっているので病院到着時に必要なものが何かはわかっていた。

妹と交代で人工呼吸を施し、手早く準備しているうちに10分とかからず救急隊の方が3名到着。
母が床に横たわっているのをみて
「どうしました?ベッドから転落したんですか?」
「いいえ、人工呼吸をするために下ろしました。電話でそう指示して下さったので」
1人の救急隊員に人工呼吸をかわっていただき、他の隊員からの質問に答える。

  • 救急連絡した時の状況
  • 母の年齢
  • 持病
  • 飲んでいる薬

救急車に乗り込めるのは1名。
救急車はすぐに出発した。朝の幹線道路は混雑していたが、救急車は渋滞をすり抜け10分程で△△救急センターに到着。
母はすぐに処置室に運ばれた。
私は待合室のようなところで待つことに。

暫くして医師がやってきた。
その厳しい表情から絶望的な結果が予想できた。
医師:「とても厳しい。ずっと心肺停止のままです。今は機械で心臓を動かしている状態ですが、どうされますか」
ああ、希望がないからもう機械を止めましょうと言うことか…。
医師:「このまま続けていても肋骨が折れたりするだけですし…」
私:「妹がもうすぐ到着します。それまでは続けてもらえますか」

助かるのなら母には痛くても我慢してもらいたい。
そうでないなら、肋骨が折れても痛くもないでしょうに。
医師はちょっと嫌な顔をした。

20分程して妹が到着。すぐに2人で処置室に入る。
機械の下で母が頑張っていた。
でも、とうとう戻ってこなかった。

機械を止めていただき、医師から死亡宣告を受ける。

看護師:「少し処置をいたしますので、待合室でお待ちください」

処置が終わった母は霊安室(?)に移された。
母はとても安らかな顔をしている。
「残念だけど、仕方ないね」と二人で話した。

暫くして警察官(刑事2名)がやってきた。
刑事:「I警察の〇〇です。こちらは◇◇です。この度はご愁傷様です。警察が着て驚かれたと思いますが、ご自宅でお亡くなりになったような形になりますので、まあ形式的なことですが、警察が視ることになっているのでご理解のほどを」

母のこと(生年月日、家族構成、どこで生まれたか、学歴、職歴、病歴、趣味趣向等)を一通り聞かれる。
刑事:「これからお母さんはI警察に運ばれることになります。そこで検死といいますか、警察がお願いしている医師にみてもらって、それからご帰宅ということになります。
Aさん(私のこと)は一旦ご自宅に戻って下さい。私らも後ほどお宅に伺いますので。またそこでお話を聞かせてください」

自宅で亡くなったので事件性がないかどうか調べられるのですね。

帰宅してからケアマネジャーに電話をする。△△救急センターの待合室からも母のことは連絡済みだったが、利用しているサービス先への連絡も再度お願いした。
ケアマネ:「そうですか、とても残念です。デイへの連絡などは私が全てやっていますから大丈夫です」
デイや訪問看護、レンタル中の福祉用具のことも全て手配をしてくれた。

それから間もなく警察の方がやってきた。
刑事:「部屋を見せてください」と母の寝室に入る。
〇〇さんからまた母のことを聞かれている間、もう一人の◇◇さんが部屋の写真を撮ったり、室温を測ったりしていた。
他にも隣人にもうちのことを少し聞いていったようだった。

刑事:「すみませんね、最後がご自宅だと一応調べないといけないんですよ。また4時ごろに連絡します。I警察署の方に来ていただくことになります。それからご葬儀の準備とかあるかと思いますが、どちらか(葬儀会社)ご存知ですか?」

父が亡くなった時にお願いした◆◆葬儀社にお願いするつもりだと伝えると

刑事:「それなら◆◆葬儀社の方にも警察の方に来てもらって。◆◆葬儀社の方に段取りをお聞きになったらいいでしょう」
刑事さんたちは30分程で帰って行った。

◆◆葬儀社に電話した。
今朝自宅で具合が悪くなり、救急車で運ばれたが亡くなってしまったこと、母は今まだI警察にいて、自宅に戻ってくるのは夕方以降になることを伝えた。
葬儀社の方は「それならI警察で落ち合いましょう。お母様はこちらの車でご自宅に戻っていただきましょう」
湯灌(ゆかん)のことなども簡単に打ち合わせをした。

夕方I警察署に行くと◆◆葬儀社の方(Nさん)も待っていてくれた。
〇〇刑事さんが来てくれ、
刑事:「W病院のW医師の検視も終わりました。こちらが死体検案書(死亡診断書にかわるもの)になります。先生によるとやはり心不全だろうということで。色々驚かれたと思いますが、後は◆◆葬儀社のNさんに任せて。ちゃんとやってくれますから」

朝救急車で運ばれてから9時間後、やっと母が家に戻ってきた。